第23章 4回目
新たな悩みが出来て、悶々と考えている内に撮影開始の時間になる。
いつものVTRを見ている時間も、ずっと先の事ばかり考えていて、話し掛けられても上の空。
NGを連発しまくり、ついには社長にキレられた。
社長に嫌われたら、残りたいと思っても契約を継続して貰うのは難しい。
張り切ってやろうとすると、今度は空回りばかりして、またNG。
結局、撮影は完全に中断されて休憩を取る事になった。
「どーしたんだよ、大熊りこ。お前らしくねーじゃん。
いつもだったら、テンパってアワアワしても何とか喋る頑張ってる感出すべ?」
「ごめん、なさい。」
休憩中、私の隣に座って眉を寄せている社長。
かなり、ご立腹みたいです。
「お前さ、今までで一番地味で、パンピーっぽいっつってもワンデレラ。それが終わるまでは、うちの看板で、プロのタレント。
アワアワしても、喋ってりゃいーの。それが、お前に求める事だ。」
言いたい事を言うだけ言って私の傍から離れると、撮影の再開を指示していた。
それに従って、スタッフやゲストの皆が動き始める。
休憩中にだらけていたり、ふざけていた人達も途端に真面目な顔をしていた。
この人達は、プロの業界人。
そして、この中で、この撮影でメインをやるのは私。
周りに迷惑は掛けられない。
悩むのは後にするとして、今は撮影に集中しよう。
再開された撮影では、NGを出す事もなく、無事に4回目のシンデレラ収録を終えた。