第23章 4回目
本当に、何もないものは何もない。
思い出すだけでイライラはするけど、嘘を吐いたら役目を奪われる京治くんが可哀想だ。
「いえ、何もないんです。だから、私ってやっぱり魅力ないんだなーって思うと悔しくて。少しは変わったと思ってたんですけどね。」
正直にイラついた理由を話した。
「大熊さんの魅力は、俺が知ってる。だから、自信持って。」
思いもよらない言葉と、慰めるように優しく頭を叩く手。
イラついていた気持ちが浄化された気がした。
「…有難う御座います。」
嬉しくて、自然に浮かぶ笑顔を向ける。
縁下さんが、少し顔を逸らした。
顔が赤いような気もしたけど。
「…そ、そういえば。大熊さん。今回が終わったら、後はシンデレラ最終回を残すのみになるけど、どうするか決めてる?」
それは、気の所為だったみたいだ。
話を変えて、再び私を見る顔は進路を聞いてくる先生のような真面目な顔をしている。
「いえ、まだ。…この世界に残るかも、一般人に戻るかも、決めてません。」
考えてみれば、後数ヶ月しかシンデレラでいる事は出来ない。
先の事を、そろそろ考えないと。
「…あの。もし、芸能人として生きたい場合は継続で契約とかってして貰えるんですか?」
「それは、社長次第だね。面白そうなら、自分の元に留めようとはすると思うよ。」
気になった事を聞いてみても、明確な答えは無かった。