第23章 4回目
光太郎も、なんとか納得してくれたみたいで京治くんから逃れて、満面の笑みを浮かべている。
「そっか!やっぱ、りこは簡単にそーゆーコトする女じゃねーんだな!」
完全に私達の話を信じきって、安心したように私の肩をバシバシ叩いてきた。
「痛い!痛いから!」
それの相手をしてる時間は無いから、すぐに手を払って距離を取る。
軽く挨拶を済ませてその場から去った。
「…大熊さん。」
「はい?」
「何も、無かったよね?」
廊下を歩きながら、周りに響かないように小声で問い掛けられる。
「何もありませんよ。本当に、残念なくらい、何も。」
これは、真実である。
あの後、普通に部屋風呂に入って。
その間、京治くんは露天風呂の方に行っていて。
戻ってきてから、俺がアンタに何かする訳ないでしょう、なんて余計な一言を放って一瞬でガン寝してくれた。
女のプライド的なものはズタズタにされただけの一晩で、慰労も何もあったもんじゃない。
寧ろ、ストレスだけがガッツリ残ったお泊まりだった。
思い出すとイライラして眉を寄せる。
「大熊さん?何かあったなら、はっきり言って。場合によっては、社長と話して彼を役目から降ろしてもいいから。」
感情を顔に出したから、心配されてしまった。