第23章 4回目
あの旅番組の後、慰労を兼ねて京治くんが旅館を手配していたのは事務所にも伝えてある。
なのに、なんでこんなに怒られているんだろう。
何か言わないと、もっと怒らせそうだと分かっているのに、声が出ない。
「すみません。りこさん一人で、ゆっくり満喫して頂こうと思っていたんですけど…。
予定より撮影が長引いて、俺が帰れなかっただけなんです。他のホテルに移動も出来ないような時間で…。」
助け船のように京治くんが喋ってくれた。
だけど、言っているのは真っ赤な嘘。
撮影が終わって、泊まる泊まらないの押し問答をしていた頃は、まだ夕方過ぎくらいだった筈。
移動手段が無くなる時間じゃなかったし、他のホテルとか手配しようと思えば出来たような時間。
「そうなんです。流石に、ゲストとして連れていった京治くんに野宿して貰う訳にはいかなくて…。」
まぁ、そんな嘘でも吐いて貰わないと、納得して貰えないだろうから、それに乗っておいた。
「今回は、トラブルに繋がっていないから良いけど…。軽率な真似はしないで。」
縁下さんは、伺うように私を眺めた後に溜め息を吐いて、お許しをくれる。
私は軽率な真似をしたくなかったけど、意外に押しが強い京治くんに流された私もやっぱり悪かったな。
次回からは何がなんでも、断ろうと決めた。