第22章 食レポ
お互いに、首を振っているだけの異様な光景。
もう、京治くんを置いて帰ってしまおうかと思って、荷物を纏めた。
「大丈夫です。」
そんな事を言われても、信用は出来なくて立ち上がる。
「もし、写真でも撮られてスキャンダルになりそうでも、それが世間に出る前に番組が放送されます。
撮影の延長で旅館に泊まっただけ。部屋は別だったと主張を続ければ良いんです。」
「でも、口の軽い仲居さんとか居たら…。」
「何回もテレビに取り上げられるような旅館です。そういうのは徹底してますよ。守秘義務ってありますし。
小銭を稼ぐ為に俺達の情報を売って信用を落とすより、客の事は答えられないと信用を護って。有名人も泊まる旅館としておいた方が、長い目で見たら良いに決まっているでしょう?」
つらつらと話される言葉が長すぎて聞くだけで疲れてきた。
それでも、理解は出来てしまって。
「…確かに。」
納得の一言を口から出す。
「…なら、泊まりで良いですね。」
その言葉を待っていたと言わんばかりの、笑顔を浮かべる京治くん。
同室でも問題ない理由には納得したけど、同室で大丈夫だと言った訳じゃない。
でも、食レポ等々の件によって露見している私の語彙力の無さでは、駄目な理由を説明する自信も無く。
無理はなものは無理だと言い返しても、言いくるめられる想像しか出来ず。
諦めて、この日は旅館に泊まったのでした。