第22章 食レポ
非常にやり辛くはあるけど、淡々と撮影は進む。
そして、今回の旅先のメインとなる旅館に辿り着いた。
ここの夕食を紹介して、本日の撮影は終了になる筈だ。
用意された一室。
真ん中のテーブルに、刺身とか一人用の鍋が2人分向かい合わせに並べられていた。
見た目も綺麗で、食欲をそそるけど。
これも全部は食べさせて貰えないんだろうな、とか思うと気分が落ち込んでいく。
そんな状態でも、私と京治くんが座ると、撮影は開始された。
女将さんと、板前さんと会話をしてから。
やっと、食事に手を付ける。
撮影が終了して、カメラが止まったら食べさせて貰えなくなるから焦って、一口が思った以上に大きくなってしまった。
その所為で、中々飲み込む事が出来ず。
更に、相当な間抜け面なのか、周りの人達が笑いをこらえている。
「…ちょっと、一回止めて下さい。」
見るに耐えない状態だったみたいで、京治くんがカメラの前に手を出して止めた。
「お水、飲んで下さい。」
撮影が中断されると、差し出されたグラス。
それを受け取って、口の中に残っていた食べ物ごと飲み下した。
「…すみません。撮影止めて。」
「まったくですよ。なんで、あんな無茶したんですか。自分の口の許容量くらい分かってるでしょう。」
説教じみた事を言い始める京治くんは、呆れた顔をしている。
1年シンデレラである私の目標。
綺麗になって月島さんを見返す事。
その為に、必要な食事制限だ。
それを嫌がって、無茶な事をやって、撮影を止めるなんて馬鹿のやる事だったと気付いた。