第21章 ドッキリ
文句を言いたいけど、この世界で上の人に嫌われるリスクは大きい。
いくら、自分の事務所の看板であるタレントであっても所詮は1年の契約だ。
干されて、シンデレラ最終回まで、他の仕事をさせて貰えないのも困る。
頭の中では、色々と言ってやりたい気持ちと、これから先の事を考えて押し留まる気持ちが戦っていた。
「大熊りこ、どうした?」
「…どうもしません。」
「そうかぁ?じゃ、ほら、行こーぜ。力ちゃんも、早くしろ。」
呑気な感じの社長に腰を抱かれた状態で移動する。
帰りの車に乗る為に、駐車場に行くのかと思っていたけど、連れていかれたのは出入り口から死角になっている場所。
外であると言うのに、モニターやらが置いてあって、さっきのドッキリ番組のスタッフがいた。
「悪いね。コイツに説明忘れてたから、引っ掛かっちった。直せる?」
軽い感じでスタッフに話し掛ける社長。
数人がすぐに出入り口の階段まで行って、作業をしている。
「アレな、お前用の仕掛けじゃねーんだよ。ま、落ちた瞬間の間抜け顔は面白かったけどな。」
意味不明で、状況を把握しようと周りを見ていると、ゲラゲラと楽しそうに笑いながら社長が説明してくれた。