第21章 ドッキリ
足が沈んで、バランスを崩す。
転んでも怪我をしないように身を縮めた。
その状態で、重力に従うように視界が落ちていく。
だけど、思ったよりも地面が柔らかくて、痛みは無かった。
「…いった。…大熊さん、退いて貰っていい?」
自分の後方、地面だと思っていた部分から声が聞こえる。
慌てて振り向くと、縁下さんを下敷きにしていた。
「す、すみませんっ!」
すぐに離れて立ち上がろうとしたけど、床に挟まっていない方の足も柔な部分を踏み抜いたみたいで。
またも、床が割ける音がした。
運動神経の良くない私が、再びバランスを崩すのには充分な要素だったけど、今度は転びすらしない。
背中に腕が回って、支えられているのが分かった。
私の後をついてきていたのは縁下さんだけじゃなかったから、この腕の主は必然的に社長である。
「お前は、足元くらいちゃんと見とけよなー。力ちゃんとか、俺いなかったら大怪我してたべ?」
いきなり始まる、社長からの説教には黙ってしまう。
そもそも、階段にこんな板が仕掛けられていた事が問題だから、私の不注意だけを責められると苛立った。
ドッキリとはいえ、怪我しかねない事をタレントに仕掛ける。
それを了承したであろう社長だけは、本気で信用出来なくなった。