第20章 会合
それから、3人で仕事関係の話を始める。
一応、勤めていたんだから内容は理解出来るけど、今の私は部外者なので黙っている事にする。
そんな中、天童さんの同僚らしい人が呼びに来て。
「りこちゃん。また後で、お話しよーネ。」
最後には、何故か私に声を掛けて去っていった。
その人を見送ると、2人に向かって頭を下げる。
「…すみません。」
多分、手を掴まれて困ってたの、顔に出てた。
それに気付いたから、取引先の人間相手に失礼な真似をした。
だって、他の人と挨拶している時に割り込むなんて、月島さんがする訳はないし。
澤村さんも、ずっと傍に居たなら止めた筈の事だ。
「気にするな。お前を呼びつけたのは、こちらだからな。出来るだけ、嫌な目には遭わせないようにするさ。」
朗らかに笑ってくれる澤村さんと、対照的に何も言わず機嫌が悪そうな月島さん。
会話を続けられる訳もなく、妙な沈黙が訪れる。
「大熊りこ。他に挨拶回り…。」
他の人との話を終えた社長からの助け船と思ったけど。
「俺、行ってくっから、月島ちゃん、エスコートしてやってよ?」
余計な提案をしてくれた。
その顔には、ニヤニヤと楽しそうな笑顔が浮かんでいる。
「おぉ。それはいいな。会場は広いし、今は有名人の大熊を一人にする訳にはいかないからな。」
「だからって、何で僕が…。」
「月島、頼んだぞ。」
都合の悪い事に澤村さんまで、それにノってしまって。
私と月島さんは、その場に置いていかれた。