第20章 会合
いつも、と言われても私が会社を辞めてから半年以上経っている。
こちらこそ、というのは違うし…。
なんて返せば良いか分からないから、愛想笑いだけで対応した。
その対応でも、お気に召したのか、手を離してくれない。
「…天童サンじゃないですか。いつも、お世話になってますー。」
困っていると、これまた聞き覚えがある声がして。
私の手から天童さんの手を奪うようにして握手をしていた。
そうだ、この人の担当先だった、この会社。
上司である澤村さんと一緒に来ていたんだ。
「アララ。月島クンってばヤキモチ妬きネ。」
私の時とは違って、すぐに手を離した天童さんが、ニヤけた笑みを浮かべている。
「自分の担当している先の方に挨拶しにきただけで、そう取っちゃいます?頭の中、それしか無いんですね。」
月島さんも笑顔で返した。
2人とも、笑っているのに空気は冷たい。
こんなので、会社間の関係が悪くなったらどうするんだろ…。
「コラ。月島。止めなさい。すみません、天童さん。」
それを止めたのは、一緒に居たらしい澤村さん。
月島さんの背中を押して、無理矢理頭を下げさせていた。