第20章 会合
澤村さんが、私に出席を頼んできた会合は、とある大手会社の記念パーティーだ。
なんでも、その会社が創立50周年を迎えるから、大規模なものをやるらしい。
それには、有名人も多く招かれていたようで、カメラは勝手に入っていた。
その上、うちの社長は個人的に招待を受けていた。
初めから私を連れてくる予定ではあったようで、澤村さんの依頼があったからタレントとしての派遣料金を取れると喜んでいたと縁下さんから聞いて呆れている。
役員さんだとかに挨拶とか言って社長に連れ回され、会が始まって数分の内に疲れてしまった。
社長は社長で、話に花を咲かせて私は放置気味だ。
だからって傍を離れる訳にも行かず、たまに相槌を打ったりしながら隣に立っていた。
「りこチャン!会いたかったヨ!」
突然、後方から聞き覚えのある声がする。
振り返ってみると、赤っぽい髪の男性が立っていた。
顔に、覚えはない。
だけど、声は確実に知っているものだった。
だとすると、事務員時代に電話で応対をした事のある相手。
「…もしかして、天童さんですか?」
思い出すように少し間を空けてから、この声に当てはまる人物の名前を上げる。
「そーだヨ!いつも、丁寧な応対アリガトネ。」
満面の笑みで頷く天童さんに手を握られた。