第19章 お引っ越し
意味が分からず、ガチガチなまま、やっとの思いで絨毯の上に腰を下ろす。
「…さて。大熊が、何も知らなかったのは、どういう事だ?」
隣に座った澤村さんが、恐ろしい笑顔で口を開いた。
「社長、言って無かったんですか?澤村さんの家の隣に部屋が空いてたから、そっちを借りたって。」
「そういうの伝えんのが力ちゃんの仕事だべ?」
「俺にばかり、責任押し付けるな。」
責められているのは主に社長だ。
澤村さんと、縁下さんの2人に言い訳をしているけど、通用していない。
「まーまー!今日は、りこの引っ越し祝いだろ!ケンカすんなよ、な?」
険悪なムードを払う光太郎。
それで、社長への説教タイムは終わり、引っ越し祝いパーティー名目の飲み会に移行した。
そんな中で、聞いた情報によると…。
澤村さんも、あの時は勢いで言ってしまったけど、一応は自分も男だから2人暮らしはマズイと判断したようだ。
でも、断りを入れたら、また私を誰の家に住ませるかで揉めるのが予想出来て。
たまたま、最近隣が引っ越して空室になったのを良い事に、同じ部屋で無くても隣なら殆ど変わらない、と押し切ったらしい。
ついでに、上の階にも空室があったからって、光太郎が引っ越して来るらしいという、いらない情報も聞かされた。
相変わらずの、思い付いたら突っ走る系のやり方には呆れるけど。
近くに、知り合いが住んでいる事は安心出来る上に、誰とも同居せずに済んだから良しとする事にした。