第19章 お引っ越し
お隣の扉の前。
インターフォンを押して、返答を待つ。
『はい。』
「…あ、あの。隣に引っ越してきた者ですが…。」
機械を通して聞こえた声に、覚えがある気がして一瞬だけ迷ってしまった。
それからすぐに、開かれた扉。
中からは澤村さんが出てきて…。
「大熊、少し振りだな。」
さも当たり前のように、私を部屋に招き入れた。
「あ、あ、あのっ!お隣さんが澤村さんで、間違い無いんですか?」
「あぁ。そうだ。お前、何も聞いてないのか?」
リビングに続くだろう扉のドアノブを掴んだまま振り返る澤村さん。
「聞いてません。あの、澤村さんのお家にお世話になるのでは?」
「それは、すぐに説明するさ。ほら、入れ。」
開かれた扉の向こう側。
リビングには、見知った面々が揃っていて。
テーブルの上には、沢山の料理が用意されている。
「今日は、お前の引っ越し祝いだ。取り合えず、座りなさいよ。」
あまりに予想外が起こりすぎて、軽くパニックで固まっている。
澤村さんに優しく背中を押されて、ようやく動く事が出来た。