第19章 お引っ越し
引っ越しの日まで、この家に住むのは仕方ないと思っていたけど。
家に居ても、危ない目に遭いかけた私を皆は放っておいてはくれず…。
結局、ホテルを手配される事になった。
そして、その間に皆で勝手に引っ越しを済ませてくれる、という。
とても有難くない展開。
確かに下手に業者を使うと、情報が漏れる可能性もあるから、関係者だけでやるのは分かるけど…。
荷造りも、本人である私にはさせてくれなかった。
と、いうか、あの日以来マンションに近寄らせてさえくれなかった。
タンスの中身とか見られた可能性もあるから、気が重い。
そんな事ばかり考え続けて数日。
ついに、引っ越し完了の知らせが来て。
迎えの黒尾さんに連れられ、私の新しい家に向かう。
辿り着いたマンション。
黒尾さんは部屋まで分かっているようで、案内された。
鍵を受け取り、部屋に入った途端に感じる違和感。
人が住んでいる場所の感じがしない。
真新しい、リフォームしたてのノリの匂いのようなものがした。
澤村さんの、自宅ではない気がする。
怪しんで、一緒に居た黒尾さんを振り返った。
「ほれ。隣に挨拶してこい。」
いつも通り、胡散臭い笑顔で押し付けられた紙袋。
中身は、挨拶用の熨斗紙に包まれた品物。
聞いても、説明はしてくれないと思うし。
多分、隣近所はリサーチした上で引っ越しはしている筈だから、諦めて挨拶に向かった。