第16章 温厚な人ほど怒ると怖い
仁と龍ちゃんを交互に見る
あ…そっくりだ
なんで私気づかなかったんだろう
「あいりに言ってなかったか?息子がいるって」
『聞いたことはあったけど、仁だとは思わなかった』
ってことは綾香ちゃんが仁のお母さん…
あはははと力なく笑う
この親にしてこの子ありって…ねぇ…?
「まぁ、いいじゃない。仁が橘との婚約破棄してほしいって言うからしてあげたけど。新しい婚約者があいりなら私は嬉しいわ!」
『綾香ちゃん…』
「俺も賛成だよ、あいりは抱え込む癖があるからな。俺らはもちろんだけど仁にも甘えろ。一応こいつは俺らの息子だ。そう簡単にくたばらねぇ。」
龍ちゃんと綾香ちゃんは私の祖父の件も知っている
その上で私に言ってくれてるのは分かってる
「あいりは仁のこと嫌い?」
綾香ちゃんの真っ直ぐな瞳
『…っ、』
私の家のことは私が解決しなきゃ
なのに…
「あいり…お前は俺のものだ
お前の全部俺にくれ」
全てを投げ出して縋り付きたい…
『め…迷惑じゃ…ない?』
「ああ」
『…本当に?』
「もっと頼れよ」
『…………っ』
「俺を信じろ」
『……………ん。』