第16章 温厚な人ほど怒ると怖い
「お父様何てことを!あんな人と可愛い私を結婚させるおつもりですか?ひどい、嫌ですわ!」
酷すぎます!
どいつもこいつも桜宮の言いなりになって!
ふと正面を向くと麗しい仁様がこちらを見ている
あ、そうよ!
彼は私に惹かれていたはず…
今、顔には出さないけど必死に私を取り返す方法を考えておられるんだわ!
身内に取られてしまった悲劇のヒロイン(許嫁)をヒーローが取り返して…
これはもしかして大仕掛けのサプライズかしら?
私を惚れさせたいがためにね?
もう、仁様は奥手ですものね
私がフォローを出してあげないと、手が焼けますわ
「仁様は愛する私をあのような男に取られてよろしいの?
嫌なら嫌とはっきり申さないとお義父様とお義母様には伝わりませんわよ?」
ここでヒーローは両親の反対を押し切って私を取り返しに来るの!
仁様に近づき手を取り上目遣いで見つめる
「ねっ?」
これで落ちない男はいないわ…
「……せ」
「…え?」
「…離せ」
「仁…様?」