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短編小説

第1章 日常(楽紡)



「パパ、ママ…おはよぉ…」

すると、楽と紡の子供である、美来が眠そうな瞼をこすりながら、起きてきた。
紡は慌てて楽から離れて、美来を抱き上げる。

「おはよ、美来。パパ、美来ね、一人で顔を洗えるようになったの。見てあげて?」
「そうなのか、すごいな。」

紡から楽の腕へ抱き上げられた、美来は嬉しそうに、大きく頷いた。
ふたりが洗面所へ消え、楽しそうなはしゃぐ声を聞きながら、朝食作りの続きをする。

「(…あ、顔は洗えるけど、気を付けないとびしょ濡れになる事、言ってなかった…ま、いっか)」

なんて思っていると、洗面所からびしょ濡れになったふたりが戻ってきた。

「紡…タオル」
「ふふっ、はい、どうぞ。」

思わずクスクス笑いながら、ふたり分のタオルを渡す。
ついでにと、楽に美来の着替えを任せると、紡は朝食をテーブルに並べる。

『いただきますっ!』

ふたりの着替えも終わり、みんな揃っての朝食。
楽と紡の職業柄、こうして揃っての朝食は本当に珍しいので、美来も嬉しそう。
他愛のない話をしながら、ゆったりとした朝食。

「パパ、今日は早く帰ってこれるんでしょう?」
「ああ、撮影だけだからな。夕飯には帰れるだろ」

楽のその言葉に美来はもちろん、紡まで頰を緩める。
朝食を食べ終えると、美来と一緒に楽のお見送りをするべく、玄関へ向かう。

「いってらっしゃい、パパ」
「いってらっしゃ〜いっ!」
「いってきます」

楽は紡と美来の頭を愛おしそうに撫でれば、満足したように家を出ていった。

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