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短編小説

第1章 日常(楽紡)



ーー今日も1日が始まる。

楽と結婚して数年が経ち、子供にも恵まれた紡は、今日も誰よりも早く起きていた。

朝、起きて顔を洗って着替え、それから楽と子供の朝食を作る。
その頃になって、やっと楽が起きてくる。

「おはよ、紡」

後ろから優しく抱きしめてくれる、優しい腕。
この腕に抱きしめられていると、すごく落ち着いて時間さえも忘れてしまいそうになる。
紡は振り向いて楽に満面の笑みを浮かべ、ぎゅっと抱き返す。

「おはよう、楽」

そうすると楽は「堪らない…」と言わんばかりに紡に触れるだけのキスをする。
結婚して数年経っているのに、これだけは欠かさない。
喧嘩してこれがない日には、楽の1日は魂が抜けたような感覚になるらしい。(本人曰く)

「…、はぁ…っ、が、楽…もう、おしまい、…」
「…ちぇ…」

油断をすると、朝にも関わらず押し倒そうとする楽の肩を軽く押して体を少し離す。
少し拗ねたような表情をする楽に、紡はくすりと笑って耳打ちをする。

「続きは夜に…」

言った瞬間、楽の顔がぱぁっと分かりやすく明るくなる。

「いいのか?明日仕事だぞ?」
「ん、いいよ。…だから、早く帰ってきて?」
「わかった…!」

そしてまた紡を強く抱きしめる。


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