第111章 思わぬ出会い(7)
櫻井「…この本は…?」
翔「僕がこの絵本を持って神社にいた所を保護されました。絵本の最終ページを見て下さい」
社長は俺が言う通りに絵本の最終ページを開いた
櫻井「…さくらいしょう…」
翔「はい…正直僕の身元を示す物はそれしかありませんでした」
櫻井「…何故神社にいたんだ?」
翔「それは僕にも解りません…僕をあの神社に連れていったのは…櫻井婦人です」
櫻井「洋子が!?まさか!」
翔「本人から直接聞いたので間違いはありません」
俺がそう告げると、社長はかなり驚いていた
櫻井「何故…洋子が…」
翔「僕からもひとつ伺っても宜しいですか?」
櫻井「…何だね…」
翔「聞いた所、母は僕を女手ひとつで育てていたそうです…何故そんな事になったのか…何かご存知ではないですか?」
俺の問いかけに社長は考えこみ
櫻井「…悪いが私にも解らない…陽子は突然私の前から消えたんだ…行方は私も探していた」
え?突然消えた?
和「その時妊娠していたのでは?」
櫻井「それも解らない…陽子からは何も聞いていない」
じゃあ社長が俺の父さんかははっきりしないな…
和「大崎さんが姿を消したのはいつ頃ですか?」
櫻井「…もう30年は経つな…」
雅「…翔ちゃんの歳と合うね」
…もしかして母さんは妊娠が解って姿を消したのか…?
社長には何も告げずに…
そんな話をしている矢先、突然社長が
櫻井「…翔…ここに帰ってくる気はあるか?」
翔「…え?」
櫻井「お前が陽子の息子だというのなら、恐らく私の息子で間違いないだろう…お前さえ良ければ…」
…俺の事…息子だと認めてくれるのか…?
翔「…ありがとうございます…でも僕は今『大野翔』なんです…」
雅「翔ちゃん…」
櫻井「…そうか…」
見ず知らずの俺の話を聞いただけなのに俺の事を認めてくれた…
その心の広さに胸が熱くなった