第75章 忘れられぬ想い(5)
~翔side~
だんだん雨脚が強まる中、俺は宛もなくさまよっていた
翔「…とりあえず…今日はどこかのホテルに泊まって…それから…」
今後の事を考えていた時…皆の顔が浮かんできた
ー…智くん…智くんが訪ねて来てくれたお陰で俺は一人にならず、そして俺達の夢を叶えてくれた…ー
ー和也…和也は俺の出生を聞いても変わらず兄と慕ってくれた…俺達は家族なんだと言ってくれた…ー
ー潤…ごめんな…松本の父さん母さんの変わりにお前の事出来る限り見守るつもりにしてたけど…ー
そして…雅紀…
本当はどんなに嫌われても良い…
ずっと側にいたかった…
翔「雅紀…」
溢れる涙を拭うこともせず、俺はフラフラと歩き続けていた
暫く歩いていると後ろから
<バシャバシャバシャ>
…と、水溜まりの上を走る足音が聞こえてきた
ー誰かが傘も指さずに雨降りの中走ってるな…って、俺も人の事言えないよな…ー
俺は後ろの人を行かせるため、後ろを振り向きながら道を譲ろうと端に寄ろうとした
その時走ってきた人物を見て俺は一瞬ゾッとした
その人物はパーカーを被り、マスクをした状態で顔はハッキリとわからなかったが、その隙間から見えた眼は俺を睨み付けていた
ーまさかアイツがストーカー!?ー
俺はすぐ近くの横道に入って通り抜けようと走った
するとやはりストーカーらしき人物も後をおって来た
ー確かこの道を抜けて大通りに出て上手くいけば…!ー
俺が大通りに出たとき、タイミングよく歩行者信号が点滅していたから、迷わず走り抜けた
そして中程まで来たとき信号が赤に変わり、車が往来し始め、ストーカーは渡れず何とか巻くことができた
ー今の内に距離をとらないと…ー
俺はまた走ってその場を離れた