第54章 真実
翔「あの時は松本の名前を出すと、潤が疑われるかもと思って、思わず櫻井の名前を出したんだよな…」
和「…翔兄さん…一体何故…」
俺の問いかけに、翔兄さんは答えてくれた
翔「…俺が覚えてるのは三歳の時、多分母親だと思うけど、女の人に手を引かれて神社に行ったんだ…『ここで待ってて』って言ってたと思う…その時俺はこの絵本を持って母親を待ってたんだ…真冬の雪の降る中…」
和「…その女性は?」
翔「…それっきり戻って来なかったよ…でも俺は待ってたんだ…ずっと…」
その時の翔兄さんの顔は暗く沈んでいた
翔「夜も更けてきて、寒いしお腹は空くし…誰も俺の存在に気づかなくて、とうとう泣き出したんだ。そしたら、偶々(たまたま)通りかかった松本の両親が気づいてくれて、とりあえず自宅に連れていってくれたんだ」
和「それ以降、松本家に…?」
翔「翌日警察に届けたんだけど、当然母親からは何の問い合わせもなくて…施設に入れられる所だったんだけど父さんが『今、家には一歳になる子供が一人いるから、二人も三人も育てるのは一緒だ!』って言って引き取ってくれたんだ。俺は覚えてないけどな」
…そんな犬猫みたいに…