第33章 偽装親子(6)
和「え!?じゃあ幹矢さんは、私が香住さんではないと気づいていたのですか?」
あの日から数日後、幹矢さんが便利屋の事務所に来てくれていた
幹「まぁな。いくら記憶喪失でも、ちょっと余所余所しすぎだったし、香住ちゃんが一度『男の人だったけど、街中で自分によく似た人を見掛けた』って言ってたから、もしかして…って思ってあの時確認しようとしたんだよ」
確認…って、あの押し倒された?
潤「なら最初に言ってくれたら良かったのに…和、怯えてたんだぞ」
幹「悪かったよ。正直あんたらが遺産目当てで、香住ちゃんのフリをしてるんじゃないかって思ったからさ」
まぁ…そうでしょうね
雅「でも香住さん、何でT県まで行ってたのかな…」
幹「…多分、T県にある漢方薬専門店に行こうとしてたと思う…」
漢方薬?
幹「この間警察から戻ってきた香住ちゃんの携帯の発信履歴に、そこの店の電話番号が残ってたんだ。その店って、癌の傷みを和らげる漢方薬なんかを販売してるらしいから…」
…本当にお父さん想いの優しい人だったんだな…一度会ってみたかったな…香住さんに…
幹「そういえばお前…柏木さんから聞いたけど、伯父さんの遺産俺に譲渡するって言ったらしいな…何でだよ?」
和「ああ、辰己さんには申し訳ありませんけど、やっぱり私が貰う訳にはいきませんよ。それより、幹矢さんの方が適任だと思っただけです。香住さんも喜びますよ」
幹「…お前も大概お人好しだな…」
…そうかな?
幹「さてっと…俺はそろそろ帰るとするか」
あ、しまった。忘れてた!