第29章 偽装親子(3)
父「香住…おはよう」
俺は軽く会釈して側に寄った
潤「おはようございます。お加減はどうですか?」
父「大丈夫だよ。今日は良い天気だな…」
その言葉に、俺はふと思い立ちペンとメモ帳を出して
『外へ散歩に行きませんか?』
と書いて見せた
お父さんは少し驚いた顔をしたけど
父「ありがとう…だが、外に出歩くほどの体力がなくてな…すまないな…香住」
俺は首をふって
『大丈夫、元気になったら一緒に行きましょう』
と書いた
父「そうだな…楽しみにしてるよ…香住…その棚の一番上の引き出しをあけてくれないか」
言われた引き出しを開けると、そこには小さな箱が入っていた
父「開けてごらん」
開けてみると、中には花の形をしたペンダントが入っていた
父「本当は先週の香住の誕生日に渡したかったんだが、渡せなかったからな…誕生日おめでとう…」
俺はその言葉を聞いた途端、涙が溢れてきた
父「どうしたんだ?香住」
『とても嬉しくて。ありがとうございます、お父さん』
俺は今の率直な気持ちを書いた…『大野和也』ではなく『松山香住』として…
父「良かった…大切にしてくれ」
何がなんでも香住さんを探し出して、このペンダントを渡すんだ!
父「松本くん、悪いがそこの内線で柏木を呼んでくれないか?ちょっと仕事を頼みたいんだ…」
潤「あ、はい…」
それを聞いた俺は
『仕事は駄目です!安静にして下さい!』
父「ははは…厳しいな香住は…大丈夫、ちょっと資料を頼みたいだけだから」
<コンコン>
柏「失礼致します」
父「香住…松本くん、悪いが席を外してくれ。大事な内容なんでな…」
潤「はい…行こう」
俺は潤くんと一緒に部屋を出た
父「…ありがとう…」
和「…?」
その時の俺は、お父さんの言葉の意味が解らなかった…