第28章 偽装親子(2)
柏「こちらです」
<コンコン>
柏「旦那様、柏木でございます。ただいま戻りました」
「入れ」
柏木さんの案内で通された部屋の中央にベットが置かれていて、そこに男性が寝ていた
あの人が香住さんの…
柏「旦那様、お嬢様をお連れしました」
父「香住…香住なのか…?」
旦那様と呼ばれたその人は、顔色が青白く、起き上がるのもやっとといった感じだった
父「香住…もっとこっちに来てくれ…」
迷ったけど、涙を滲ませながら手を伸ばしてきたから、思わずその手を握った
しまった!男の手だとバレるかも
父「香住…良く帰ってきてくれた…柏木から記憶喪失で声も出せなくなったと聞いたが、こうして側にいてくれるだけで私は嬉しい…」
バレてはいないようだけど、俺の手を握り泣いていた
柏「旦那様…ご無理はいけません…少しお休みください」
父「…そっちの彼は?」
柏「こちらの方は事故に遭われたお嬢様を助けて下さったそうです」
潤「松本と申します…」
潤くんは深くお辞儀をした
父「そうか、今日香住が帰って来れたのは君のおかげだ…ありがとう…」
潤「いえ…」
柏「お嬢様、今日はお疲れでしょう…部屋でお休みください。松本様もお部屋をご用意しますので」
そう言われても、俺はここを離れる気にはなれず首をふった
柏「お嬢様?」
父「香住…部屋で休みなさい…」
俺は再度首をふった
潤「香住さんはお父さんの側にいたいんだと思います…俺も一緒にいますので…」
父「香住…」
柏「畏まりました…では後程お部屋までご案内しますので」
柏木さんは部屋を出て、俺は潤くんと一緒にお父さんが寝付くまで側にいた