【HQ】片翼白鷺物語(カタヨクシラサギモノガタリ)
第3章 星に願いを【Xmas番外編】
意を決した朔弥は、ぎゅっと瞼を閉じて一気に言い放つ。
「さっきコンビニに行こうと外に出たらギックリ腰で行き倒れてるサンタクロースのおじいさんに会って代わりにこれを若利に届けるよう頼まれました!」
ずいっ、と突き出されたビニール袋を、牛島は勢いのまま受け取る。そろりと瞼を開けた朔弥が、呆気にとられる牛島へ畳み掛けるように言葉をつないだ。
「ず、随分とご高齢だったし凄い忙しいみたいだったし、ほら、クリスマス本番だし俺は暇してるし、困ってる人を放っておけなかったっていうか、その、なんていうか、あの、」
言い重なれば重ねるほど、なんて無理のある苦しい言葉だろう、と朔弥は頭を掻き毟りたい衝動に駆られる。
とてもじゃないが、いつものように目を見て話せない。彼に嘘を吐くことへの罪悪感と、彼の夢を壊すことへの罪悪感とを左右の皿に乗せた天秤。どちらがより重いだろうか。ドッドッドッと心臓が胸骨を激しく乱打し続ける。
沈黙が重い。冷や汗を流し、おのずとベッドの上で姿勢を正した朔弥から逸らされない牛島の視線が朔弥に突き刺さる。痛みにもぞりと身じろぐ。
「……サンタクロースに会ったのか」
「! う、うん」
「おまえに、俺の望むプレゼントを託したんだな」
「そ、だよ!」
しどろもどろになりながら必死で頷く。そうか、と短く答えた牛島が朔弥の隣に座る。その反動で弾んで沈んだベッドのスプリングのせいで、牛島へもたれかかるように傾いだ身体を慌てて起こす。それくらい近い距離に彼が腰を下ろしたことに、朔弥は疑問符を頭上に浮かべた。
「若利……?」
「なんだ」
「いや、なにっていうか、……なんで?」
「? 何か間違っているか」
会話が全く噛み合わない。互いに首を傾げ合っていると、かさり、と牛島の手の中で音がした。
「あっ、しまった、形崩れちゃったかも!」
「……ところで、こんな時間に外へ出るのは規則違反だ」
「そ、そこは見逃して下サイ」
「フ……開けてもいいか?」
もちろん、という言葉と同時に、袋の中に入っていたそれを取り出す。不恰好だが丁寧に何枚もの色紙を貼り繋いだ包装紙を開くと、中から牛島が全く予期しなかったものが出てきた。
「半殺し」
「は?!」
さあっと青ざめた朔弥の顔を見て、ああ、と牛島が言い直す。