【HQ】片翼白鷺物語(カタヨクシラサギモノガタリ)
第3章 星に願いを【Xmas番外編】
彼も、そして他の選ばれし一年たちもまた同じような赤と白の衣装に身を包んでいるが、朔弥のそれより布面積が広い。牛島は今年の生贄となった朔弥を好奇の視線から庇うように席に座らせると、ぐるりと無言で周囲に視線を送って威嚇する。一年とは思えぬ眼光の鋭さが、浮き足立った者たちをひゅっと縮み上がらせる。
こんなしかめっ面のサンタがいたら子供が泣くね、とまた吹き出した天童の脇腹を瀬見が小突いた。
ケーキの代わりに一人一つクリームプリンが手渡され、それを完食してパーティーは幕を閉じた。カメラ機能をオンにした携帯を手に迫る人の群れからいち早く抜け出して、朔弥は自室に逃げ去る。
散々なクリスマスだ、とさっさとふざけた衣装を脱ぎ捨て、Tシャツとスウェットに着替えると、少し思案してクローゼットを開いた。
◇ ◇ ◇
――宴の名残も消えた、午前二時。
しん、と静まり返った廊下を足音を忍ばせて歩く人影が一つ。その影はドアの前に立ち止まると、ノックもせずにそっと扉を開き部屋の中の様子を伺う。物音一つしないことを確認するや否や、するりと身を滑り込ませる。
カーテン越しに薄っすらと部屋を照らす常夜灯の淡い光を頼りに、そろりとベッドへ近付き、静かに横たわる人物の枕元へ手を伸ばした。
「誰だ、何をしている」
「っ!」
突如、伸ばした腕を掴まれて、真夜中の侵入者はぎょっと身を引いた。しかし、きつく手首を締め付ける彼の手はびくともしない。力の差は圧倒的だが、それでも必死で逃れようともがいていると、思い切りその手を引かれてベッドに組み敷かれる。
「っ! ……!」
「おとなしくしろ、……?」
掴んだ手や馬乗りに押さえ込んだ身体はめちゃくちゃに暴れるのに、もう片方の手が全くの無抵抗なことに気付いた牛島の目が、見開いた。
「紀伊、か?」
「……こ、コンバンハ」
ふ、と力の抜けた相手の上から退き、ぱちりと部屋の照明を点けると、ベッドの上にはなんともバツの悪そうな顔をした朔弥が座っていた。
「なぜ、こんな時間にここにいる」
「……ええ、と、」
「それはなんだ」
「う……」
何かを後ろ手に隠す朔弥をじっと見つめる。朔弥がその無言の圧力に耐えきれなくなるまで、そう時間はかからなかった。
「……実は」
「ああ」