• テキストサイズ

【HQ】片翼白鷺物語(カタヨクシラサギモノガタリ)

第3章 星に願いを【Xmas番外編】


「あー、あー、肉がうまい……」
「ちょっ、朔弥、おまえ目が怖えよ! 何人か殺したみてえな顔してんぞ?!」
「その格好で手掴みはダメでしょ朔弥君、っぶふっ!」
「……そっとしておいてやれ英太。そして笑い過ぎだぞ、覚」
「くっそ、なんで俺がこんな……て、複雑そうな顔とかやめて先輩! どうせなら覚みたいに笑ってくださいよ!」
 立ち上がり、隣のテーブルに陣取る年長者たちに恐れをなさず朔弥が噛み付く。羞恥と怒りで真っ赤に染まった顔の横を、折れ曲がった赤い帽子の先に付けられた白いファーが、ふよん、と愛らしく揺れる。ついに堪え切れなくなった天童が腹を抱えた。
「ダメだー、朔弥君違和感なさ過ぎヤバい、超面白ぇー!」
「違和感ありまくりだろっ、てかほんと、なんで俺だけ……っ!」
 怒れる肩は柔らかな赤いケープに隠され威力は半減だ。帽子の先と同じく縁に沿ってあしらわれた白いファーが、朔弥の動きに合わせて波打つ。
 宴が終わるまではこの衣装で過ごすこと、それも含めての余興なのだ、と寮長に言われれば脱ぐこともできない。悪ふざけが過ぎる、と抗議したが、俺が一年の時もそれを着た、と神妙な面持ちで柔道部主将でもある寮長に諭されてしまえば、もう何も言えなくなった。
「紀伊」
「わ、わかとし、」
「大丈夫だ。寮長が着るよりは、似合っている」
「なんのフォローにもなってない!」
 ケープの下はノースリーブの膝上ワンピース、いわゆる「セクシーミニスカサンタ」の衣装に一人身を包んだ朔弥が床に泣き崩れる。おおっ、という野太いどよめきがどこか一部で起きたのを察知して、大平は頭痛を覚えた。
 投げ出された足がどうにも艶かしい。真っ白なフリル付きのニーハイソックスのせいだろうか。鍛えられ均整の取れたしなやかな男子高生の脚に、倒錯した色気をまとわせる。
 おいおい、朔弥じゃ洒落にならんぞ、と太腿まで捲れ上がるスカートの裾を正してやろうと伸ばした大平の手より先に、ぐいと朔弥を吊り上げた手があった。

 そんなところに座り込むな、という声がどこか不機嫌に尖る。きょとんとした表情で朔弥が見上げると、口を引き結んだ牛島が眉間に皺を寄せていた。
/ 54ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp