第7章 Pântano
「父さん」
父「ん?」
「俺…少しホッとした。父さんから打ち明けられて」
父「そうか」
「俺ずっと…自分がおかしいんだと思ってた。ずっとずっと…悩んでた。母さんにも…散々罵倒されてきた。だから…」
父「陽子に…?」
「………母さんは…俺がゲイだって知って激昴した。散々罵倒されて殴られた。クズだって…言われた。仲良くはなかったけど…母さんなら受け入れようとしてくれるって思って打ち明けた結果、そうなった」
父「………」
「まぁ…俺も仕返しはさせてもらったから今は何とも思ってない。俺を理解してくれる友達も居るから平気だ。でもキツかったよ。実の親に拒絶されたのは」
父「翔…」
「だから…ちょっとホッとした。だから潤も…抵抗しなかったんだね。父さんと松岡さんを見てきたから」
父「潤は知ってたのか?」
潤「ん?うん…聞いたよ」
「性別で人を好きになるのはおかしいってキッパリ言ってくれた。嬉しかった」
父「翔…本当にすまない」
父さんが立ち上がり、俺の隣に座ると抱き締められた。
父「無理にでもお前も引き取っておけばよかった。辛い思いさせてごめん」
「父さん…」
父さんが両手で俺の頬を包む。
父「俺がゲイだからじゃない。翔と潤。お前達が例えどんな人間でも…私の息子だ。大切な俺の息子だ。ゲイでもノーマルでも…例えどんな人間でも…自分の命より大切な私の息子だよ」
「と、さん…父さん…!」
俺が24年間、ずっと聞きたかった言葉。
言って欲しいと言っても母さんは言ってくれなかった。
それを父さんは…言ってくれた。
言って欲しいと言わなくても言ってくれた。
この人の息子でよかった。
父さんにしがみついて俺は20年分の涙を流した。