第7章 Pântano
潤「あのさ」
「………ごめん」
潤「何でレトルトのお粥焦がす訳?」
「………すみません」
潤「本当に料理出来ないんだな。俺が来るまで何食ってたんだよ」
「まぁほら…コンビニがあるからさぁ」
真っ黒に焦げたお粥を見て潤が笑った。
潤「ここは焦げてないから食べれるな」
スプーンで白い部分をよそって器に盛る潤。
「いや、無理して食べなくていいよ」
潤「俺が食べたいんだよ」
器を持って椅子に座る潤。
向かいの席に座り、梅干しの瓶を渡した。
潤「頂きます」
一口食べて潤は笑顔になる。
潤「美味しいよ」
「レトルトだぞ…」
潤「それでも。兄さんが作った物は美味しい」
「………サンキュ」
潤の笑顔と優しさに…心の奥から湧き上がってくる気持ち。
ザワザワする。
抱き締めたい。
もし許されるなら…お前と…。
潤「ねぇ」
「え?」
潤の声で我に返る。
潤「………母さんて…どんな人?」
「………どんなって?」
潤「いや…覚えてないから。お通夜の時に話したいって思ってたんだけど…兄さん連れて来て直ぐに帰ったじゃん。俺の事見もしなかった」
お粥を口にしながら潤が俺を見つめた。
「………父さんは…何て?」
潤「勝気な美人で素敵な人だったって。自分のせいで別れてしまったけど…今でも大切に思ってるって」
「父さんが?」
潤「うん。いつも気にかけてたよ。母さんと…兄さんの事。たまに連絡取ろうとしてたみたい。『せめて翔には会いたい』って言ってた。でも…駄目だったみたいだけど」
「………母さんは…そんな事一言も…」
潤「え?」
潤の目がクリッと丸くなった。