第1章 unforgiven nuit
そっと唇を離すと…そいつは黙って俺を見つめていた。
「………逃げねぇの?」
そう答えるとそいつは軽く首を振った。
「何か…逃げちゃいけない気がして…」
「………そっか。だったらさ…俺と寝てみる?」
「え…」
「忘れさせてよ…あいつの事。お前と寝たら…この旅行が寂しい失恋旅行にならずに済む」
「いいの?俺達名前も知らないのに…」
「もう必要ねぇだろ。俺は日本に帰るし…会う事はない。俺が寝てる間にお前はここ出てってくれて構わない」
「………」
「………抱きたい?抱かれたい?俺はどっちでも良いよ」
「………抱きたい」
「………いいよ」
そしてそのまま俺達は唇を重ねながらベッドに倒れた。
言葉も交わさず…お互いの服を脱がせた。
本当にこいつはゲイじゃないのか。
そう思える程…そいつは慣れた手付きで俺を組み敷いていく。
「慣れてんな」
「そんな事ないよ」
「モテるだろ。彼女は?」
「………いるよ」
「………そっか…だよな…」
「そんな事…ここじゃ良いでしょ」
「だな…」
そしてまたそっと触れる唇。
ギシッとベッドが揺れた…。