第6章 não deixe
「お久し振りですマスター」
バーの扉を開くとカウンターでグラスを磨いてるマスターが笑顔で迎えてくれた。
マスター「おー相葉くん珍しいね。櫻井くんは?」
「今日は彼の弟連れて来ました」
マスター「弟?」
すると潤がマスターに頭を下げた。
潤「初めまして。櫻井の弟の松本潤です。兄が…お世話になってます」
マスター「弟くん…どうぞどうぞ。座って」
潤「失礼します」
マスターが嬉しそうに潤を見ながらグラスを出す。
「ウォッカにしようかな。ダブルで」
マスター「はい。松本くんは?」
潤「じゃあ同じもの」
マスター「畏まりました」
暫くはマスターの手捌きを2人で黙って見つめる。
マスター「どうぞ」
潤「ありがとうございます」
「じゃあ乾杯」
潤「乾杯」
グラスを鳴らしてグイッとお酒を流し込む。
マスター「前にチラッと弟が居るとは聞いてたけど…驚いたな」
潤「本当ですか?」
「『会いたいけど…母さんが居場所教えてくれないから会えない』って言ってたよ。でも…相葉くんと来るとは」
潤「イタリアに留学してるんです。でも祖母が亡くなって暫くこっちに。それで今…兄のとこでやっかいになってて。雅紀…相葉さんにはよくしてもらっていて」
マスター「そうなのか。まぁ兄弟だと気を使い過ぎるかもしれないな相葉くんは本当にいい奴だから。彼が居れば今までの空白埋めてくれるよ」
潤「はい」
マスター「じゃあごゆっくり」
「ありがとうマスター」
軽く頭を下げてマスターは呼ばれたお客さんの元へ行った。
潤「いいお店だね。雰囲気も…マスターも」
「うん。翔ちゃんの苦しみを救ってくれたのは…マスターだから」
マスターの背中を見つめながら俺は答えた。