第5章 Eu me apaixonei
智『………誰?』
「お前こそ誰だよ」
智『おいら…俺は…翔くんの…』
「ああ。元カレさん?」
智『………』
「伝言があるなら…伝えるけど?多分出てくるの遅くなるからさ。運動してたから疲れてるんだ」
智『運動…?』
「そう…ベッドで汗まみれになったからさ…」
智『………』
「簡単にポイ捨てした癖に…のこのこ電話なんてしてんなよ。金輪際翔に関わるな。どれだけ…あいつが傷ついてるか…」
智『………それは…』
「二度と…傷付けるな。翔も…奥さんもな」
相手の返事を待たずに俺は…電話を切った。
乱暴にテーブルに置くと風呂場の扉が開く。
翔「あれ…潤。帰ってたんだ」
「うん」
翔「そっか。雅紀送ってくれてありがと」
タオルで髪を掻きながら翔が笑顔を向けた。
「………いい人だな。雅紀さんって…」
翔「え?あ…うん…いい奴だよ。あんないい奴…どこ探してもいないよ」
「ほんとに?」
翔「俺がゲイだって知っても…あいつは顔色変えずに『言ってくれてありがとう』って…。あいつが居ないと…今の俺は…ないよ」
「そっか」
翔「うん」
「………じゃあ俺も風呂入って寝る。おやすみ」
翔「あ…おやすみ」
まだ話し足りなそうに見えたのは…きっと気のせいだろう。
翔を振り切る様にして俺はリビングを出て行った。