第5章 Eu me apaixonei
ー潤sideー
マンションに戻ると風呂場からシャワーの音が聞こえる。
風呂入ってんのか…。
鍵を置いて部屋に戻ろうとする俺の足を、リビングから聞こえる機械音が止めた。
テーブルに置いたスマホの振動だと気付いたと同時にそれは止んだ…かと思うと、また直ぐに鳴り始める。
風呂場からの音は…まだ止まない。
俺の足が…自然とリビングに向かう。
テーブルの前に立ったと同時にスマホの音は止む。
そして直ぐにまた…鳴り始めた。
ディスプレイに写し出される…『大野智』の文字。
そしてそれと同時に表示される…垂れ目の優しい笑顔。
わざわざこんな設定する奴なんて…初めてだ。
俺はスマホを手に取り、画面をタップする。
智『………もしもし。やっと…出てくれた』
「………」
智『翔くん…昨日はごめん。あんな…あんな事言って。でも…いきなりだったし…奥さん居たらああいう風に言わないと…。でも本当にごめん』
「………」
智『悪気はなかったって…言いたくて。何度も掛けてごめん。どうしても…聞いて欲しかったから』
「………」
………怒りが…込み上げてくる。
智『………翔くん?声…聞かせて…』
「翔ならシャワー浴びてる」
電話の向こう側が…息を飲むのが分かった。