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CRIME【気象系BL小説】

第2章 reunião


木魚の音。
読経の声。
すすり泣く声。


その何もかもが…俺には響かない。


隣に居る…弟のせいだ…。
隣で静かに祭壇を見つめる弟…潤。


両親が離婚したのは丁度20年前。俺が4歳の頃。
弟が…2歳の頃。


微かに残る記憶。
でもそのどれもが本当に朧気で…。
弟が居た自覚さえも無かった。


母さんは…父さんの話をしなかった。
幼い頃…聞くと怒られてた。
聞いちゃいけないんだって…自覚してからは聞かなかった。
別れた理由も…俺は知らない。


こいつは…知ってるんだろうか。


チラリと、潤の顔を見る。
潤はこちらを向かずにただ真っ直ぐに祭壇を見ている。


やっぱり…綺麗な顔立ちをしてる…。


大きな目に長い睫毛。
厚めの…唇。





『………キス…好きだなお前…』


潤『好きだよ。すげー好き。恋人とはずっとキスしてたいから…』





何思い出してんだ…!


俺は慌てて前を向いた。


あの日の事は…もう取り消す事は出来ない。
弟と…寝てしまった。
過ちを…犯してしまった。


忘れよう。
忘れなきゃいけない。
箱に閉じ込めて…鍵掛けて…奥深くに…。


今日だけだ。
もう会わない。
会わない方がいい。
こいつも…そう思ってる筈だ。
どうせ直ぐにスペインに戻るんだろう。


大きく息を吐きながら…俺は早くこの瞬間が終る様にと願っていた。
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