第2章 reunião
ー翔sideー
部長「櫻井」
「はい」
席を立ち、部長の元へ走る。
部長「これ経理部に届けてくれないか?そのままお昼行っていいから」
「あ、はい」
部長から資料を受け取り、部署を出る。
エレベーターに乗り込み、ボタンを押すとゆっくりと動き出す。
日本に戻り、何事も無かったかの様にまた動き出す日常。
起きて会社に来て、終わったら帰り、寝て、起きてまた会社に来て…。
………俺の毎日ってこんなにつまんなかったっけ…?
ぼんやりと…彼の笑顔が脳裏に浮かぶ。
笑うと下がる目尻…。
細くて綺麗な指先…。
薄い唇…。
色っぽいうなじ…。
彼と過ごした3年は…宝だった。
あんな裏切られ方したとしても…幸せだった。
やっと…そう思える様になった。
あいつのお陰かな…。
バルセロナで出逢ったあのイケメン…。
あいつと出逢えた事は…大きかった気がする。
あいつと一晩過ごした事も…良い思い出なんだ…。
でも…全てが元に戻った今…俺の胸の内にある喪失感。
何なんだろう…。
やっぱり彼が忘れられないのか…それとも…。
エレベーターの扉が開き、そのまま経理部へと入る。
「失礼します。まさ…相葉くん」
雅紀「はい。じゃあその様にお願いします。はい」
電話で話していた相葉くんが俺に向かって手を振る。
雅紀「はい。じゃあ失礼します」
電話を切ると席を立って俺の元に駆け寄る。
「これ部長から頼まれた」
雅紀「おー。ありがとう!」
笑顔で受け取り引き出しに片付ける。
「雅紀これからお昼?」
雅紀「うん。一緒に食べる?」
「うん」
そしてそのまま相葉くんと経理部を出る。
雅紀「何食べる?」
「うーん…」
雑談しながら歩いていると不意に…俺のスマホが音を立てる。
「ん?誰だ?」
ポケットから取り出して液晶を見ると俺の足が止まる。
雅紀「どうした?」
心配そうに俺を見つめる雅紀。
「………」
そこに出ていた名前は…思いもよらない名前だったのだから。