第10章 Melhor amigo
「どうして電話に出ないんだ…」
あの日。
何度も電話したのに潤からは何の応答もない。
それどころか、俺の送ったメッセージに答える事もなく、もう1週間程過ぎてしまった。
母さんからは相変わらずの電話の山。
それを俺は一切無視した。
父さんに電話をしてそれとなく場所を聞いてはみたけれど、知らなかった。
後…潤の行方を知る人物は1人しか居ない。
「はぁ…」
気乗りはしないけど…相続の件、早く終わらせないといけない。
空いた時間、俺は雅紀の部署にまでやって来た。
「ごめん藤井。雅紀…相葉居る?」
部署の入口に居た、雅紀の可愛がってる後輩に声を掛ける。
藤井「あ、櫻井さんお疲れ様です。いや、今日有給取られてますよ。朝電話があって」
「有給?」
藤井「はい。確か今日から1週間程欲しいって朝電話があって」
「………1週間…」
藤井「俺が最初に電話出たんですけど様子がおかしかったんですよね。体調悪いのとも少し違うっていうか、何か話してる雰囲気が。後で櫻井さんに聞こうかなって思ってたんですけど櫻井さんも知らないんすね」
「うん…何も…」
藤井「何か変わった事ありました?」
「いや…分かんない。後で連絡してみるよ。藤井ありがとう」
藤井「いえ。何か分かったら教えて下さい」
「うん。じゃあ」
藤井と別れて自分の部署に戻る。
何か嫌な予感がする。
潤と何かあったのなら…。
収まらない胸騒ぎを抱えながら仕事に戻るしかなかった。