第10章 Melhor amigo
翌日早朝。
母さんのせいでほとんど寝付けなかった俺は母さんの兄である叔父さんに電話を掛けた。
「もしもし叔父さん?ごめんなさいこんな早くに」
翔叔父『翔か。いや大丈夫。起きてたし掛かってくるかもとは…』
叔父さんのその言葉で何かあったんだと確信する。
「母さんに…電話口でいきなり怒鳴られて…」
翔叔父『止めろと言ったんだがな…』
「………何があったの?」
翔叔父『………父さんがな』
父さん。
死んだ…じいちゃん…。
翔叔父『遺言書でな…お前と潤に遺産をって。全体の半分をお前達2人にって』
「は、半分!?」
翔叔父『俺達も…驚いたし戸惑った。でも…父さんはお前と潤の事誰より心配してた。何もしてやれないって悔やんでた。陽子のせいでな。だからせめて…残せる物はって。手紙もあるから今度取りに来い。正式な相続の手続きも必要だし』
「叔父さんは…いいの?」
翔叔父『………今は納得してる。俺もお前に何も出来なかったし…その…同性愛者だって知った時は…色々思う事もあった。でも時代も変わって俺の考えも変わった。それでも…お前が将来結婚もせずに子供もいない人生じゃ…頼れるのはお金しかないと思ってる。だから…その為に取っておきなさい』
「叔父さん…」
翔叔父『陽子の事は気にするな。何かあれば俺に任せろ』
「ありがとう叔父さん…本当に…ありがとう」
翔叔父『潤にもそう伝えておいてくれ』
「うん。それじゃまた」
電話を切った後俺は窓を開け、空を仰いだ。
ありがとう、叔父さん。
大きく息を吐いて、俺は潤に電話を掛けた。
けれど…その日潤が俺からの電話に出る事は無かった。