第10章 Melhor amigo
潤が帰った後、それまでのテンションが下がったかの様に雅紀は黙ってお酒を飲んでいた。
話し掛けても軽い相槌を打つ位で…会話が続かない。
「雅紀…そろそろ帰ろうか?時間も時間だし…潤が待ってるだろ」
雅紀「………そうだね」
精算しようと立ち上がると雅紀が手を伸ばす。
「どうした?」
雅紀「翔ちゃん」
「ん?」
雅紀「俺潤の事愛してんだ」
「………」
雅紀「潤しか要らない。潤が側に居てくれるんだったら何でもする。他の奴には渡したくない」
「………そっか」
雅紀「………もし潤が他に好きな人が居たとしても」
「………」
雅紀の鋭い目が俺を捉える。
「………雅紀…?」
雅紀「………何でもない。今日はごめんね。帰ろう」
漸く立ち上がる雅紀。
少しふらつく雅紀を支えながら俺達は店を後にした。
タクシーを拾い、別れるまで雅紀は普通の雅紀で。
一瞬だけ俺を見つめた鋭い眼光は見間違いだったのか。
………雅紀…まさか…。
いや、きっと考え過ぎだろう。
だって雅紀が俺達の事知る筈ないのだから。
頭に浮かんだ疑念は一瞬にして飛んでいた。