第10章 Melhor amigo
「………え?」
智「あれ?確か…弟くん」
「………何であんたがここに…」
家を出た手前、鍵を持っているとは言え勝手に入るのは駄目だろうとインターホンを鳴らすと、出て来たのは思いもよらない相手だった。
智「………翔くんに呼ばれてね。どうぞ入って?」
「………」
何でお前に許可貰わなきゃいけないんだよ。
そんな言葉を飲み込みながら中に入る。
「………兄さんは?」
智「まだ寝てるよ。土曜日だからゆっくり寝かせてやって?」
その言葉にイラッとさせられ睨み付けると大野は俺の事など気にしてないのか、目の前の鏡で髪を整えていた。
………そういや、こいつ。シャツ開いたままだし…。
「………兄さん起こせないなら。あんたに聞いてもいい?」
智「いいよ。何かな」
「………兄さんをどうしたい訳?」
智「どうって…何が?」
「惚けんなよ。あんた結婚してんだろ。女作って兄さんを捨てたんだろ。なのに何で当たり前の様にここに居るんだって話だよ」
智「それを君に答えなきゃいけない義務はあるのかな」
鏡越しに俺を見ながら大野はネクタイを締め始める。
「………俺は弟だ。兄さんがあんたの事で散々苦しんでるのは知ってる。弟なんだから心配すんのは当たり前の事だろ」
智「弟だからねぇ…」
呟きながらゆっくりと大野が振り返る。
智「………本当に弟だからって理由?」
「………何…?」
ゆっくりと大野の広角が上がった。