第10章 Melhor amigo
ー潤sideー
雅紀「土曜日なのに学校なんて…学生は大変だね」
「雅紀だって学生だったでしょ」
雅紀「まぁ、そうだけど」
「テスト前だからね」
雅紀「頑張ってね。無理しない様に」
「ありがとう」
家を出ようとした瞬間、雅紀に後ろから抱き締められる。
「………どうしたの」
雅紀「………愛してるよ」
「………うん」
雅紀「『無理しない様に』なんて格好付けて…1番無理させてるのは俺だよね」
「そんな事ないよ…」
雅紀「………早く帰って来てね」
「………連絡するよ」
雅紀「うん。分かった」
名残惜しそうに雅紀が離れて行く。
「行ってきます」
雅紀「行ってらっしゃい」
マンションを出た後、俺が向かったのは………兄さんのマンション。
本当はテスト前にはまだ早すぎる。
何度も終わりにしようなんて言って…。
お通夜の日だって。
最後に身体を重ねた。
俺は俺の人生を。
兄さんは兄さんの人生を。
何度思ったかしれやしない。
それでも…こうして足を運んでしまうのはどうしてだろう。
「鍵を…返してなかったからな…」
そんなどうでもいい理由を言い聞かせながら。
俺は学校とは違う方向に向かった。
それを…さっきまで居た部屋から彼が見ているとも知らずに。