第9章 Contenda com minha mãe
「潤…!」
母「邪魔よ。退きなさい」
母さんの言葉にも潤は耳を貸さずに動かない。
「………会いたかったよ」
ぽつり、そう呟きながら潤が母さんを見据える。
「………本当はずっと母さんに会いたかった。今の言葉だって嘘だって思いたい。でも母さんは…違った?一度も会いたいって…思わなかった?」
母「………」
俺に向けられた言葉では無いけれど。
潤の言葉が、表情が…俺に突き刺さる。
今まで見た事無い位、弱々しい表情の潤がそこに居た。
なのに母さんは。
母「………思う訳ないでしょ」
たったその一言だけで、潤に掴まれた腕を振り払った。
潤「………分かった」
父「陽子!」
潤「父さんもういいよ。何かスッキリした」
母さんにまた殴りかかろうとする父さんを潤が止める。
潤「やっぱり俺の母親は昌さんだった。そうだよね。こんな人が母親な訳無い」
母「何が母親よ。血が繋がってない所か男の癖に。そいつの何処が母親よ。汚らわしい泥棒」
母さんが血走った目で昌さんを睨み付ける。
松岡「………本当に…申し訳ありません」
母「とにかくこれ以上私を汚さないで。香典もさっさと持って帰りなさい。いいわね」
深く頭を下げる昌さん。
悔しくて悔しくて。
俺は会場に戻ろうとする母さんに掴み掛かろうと一歩、踏み出した。
けれど
潤「待てよおばさん」
その瞬間、潤の平手が母さんに飛んでいたのだった。