第9章 Contenda com minha mãe
ゆっくりと病院の扉を開くと、機械音と共に目に飛び込んで来たのはベッドに横たわる初老の男性の姿。
真っ先に駆け寄った兄さんがその人の手を取る。
翔「爺ちゃん…爺ちゃん?聞こえる?俺だよ…」
優しく声を掛けるとゆっくりとその人の目が開いた。
翔「………爺ちゃん?」
翔祖父「………翔、か?」
翔「そうだよ。潤も連れて来たよ。爺ちゃんが会いたがってた潤だよ」
兄さんが俺の腕を引っ張り、その人の前に立たせる。
するとその人は、俺の顔を見るなり、涙を流した。
翔祖父「………潤?潤?本当に…潤なのか?」
「………はい。潤です。お爺…さん?」
翔祖父「潤か…。会いたかった…潤。大きくなって…」
弱々しく握ってくる手。
目尻を下げながら…しっかりと俺の顔を見据える瞳。
翔祖父「………俊くんにそっくりだな…」
「はい。よく言われます」
優しい穏やかな声に何処か安心を覚えた。
翔祖父「すまないな潤。何も出来なくてごめん。陽子を…許してくれ…」
「そんな…俺は」
翔祖父「守ってやれなくてすまない。俊くんにも…伝えてくれ…」
何度もそう言うお爺さんの手を俺はずっと握り続ける事しか出来なかった。