第9章 Contenda com minha mãe
祖父が居るという病院に到着して、車を降り、歩き出す。
翔「潤」
歩きながら振り返った兄さんにそう呼ばれ、高鳴る心臓に気付かない振りをしながら兄さんを見つめる。
翔「もしかしたらお前に不快な思いをさせる事になるかもしれない。先に謝っとくよ。ごめん」
「何があったの」
翔「まぁ、それは今度な」
それ以上、何を聞いても答えてくれないまま、俺達はエスカレーターに乗り、病室へと向かった。
エレベーターの扉が開くと、目の前に佇む兄さんとよく似た顔立ちの女性。
俺と兄さんを見るなり、何も言わずに背中を向け歩き出す。
翔「なぁ。何で爺ちゃんの事話してくれなかったんだよ」
翔母「こんなに急に悪くなるとは思わなかったから」
翔「それにしても末期癌なんて聞いてない。知ってたら出来る限り会いに来てた!」
翔母「貴方の事会わせたくなんてなかったのよ。分かるでしょ」
翔「あんたの気持ちなんて聞いてない!」
翔母「親に向かって何なのその口の聞き方!!」
母さんが立ち止まり、振り返る。
翔「………何が親だよ。息子を否定し続ける事が親かよ。人間扱いしない事が親かよ」
翔母「何ですって?」
翔「あんたみたいなのが毒親って言うんだよな」
兄さんがそう言うと同時に母さんの手が兄さんの頬に飛んだ。