第8章 Terminar
ー翔sideー
『今日帰る』
潤からのたった一言だけの連絡が入ったのは出て行ってから10日程経った頃だった。
けれどメッセージを返しても電話を掛けても相変わらず応答はしてくれない状態で。
でもやっと潤に話が出来る。
それだけでも嬉しかった。
早めに仕事を切り上げた俺は急いで職場を後にする。
雅紀「あ、翔ちゃん」
「雅紀」
途中、まだ仕事中の雅紀に会った。
雅紀「早いね。もう帰るの?」
「潤が帰って来るって連絡あったんだよ」
雅紀「………そう。良かったね」
「雅紀にも迷惑かけてごめんね。もう大丈夫だと思う。ありがとう」
雅紀「ううん。またいつでも…言ってね」
「うん。ありがとう」
雅紀に手を振って会社を後にした。
マンションに戻ると玄関に揃えられた潤の靴。
「潤!帰ってるのか?」
物音のする潤の部屋を開けると片付けをしている潤の背中が目に入ってきた。
「潤…!」
潤「お帰り。早かったね」
背中を向けたまま、静かにそう答える潤。
「潤…何してるの」
潤は…大きな鞄の中に自分の服を詰めていた。
「潤」
潤「俺ここ出て行くよ。お世話になりました」
「え…?」
潤の言葉に、浮上した心が一気に叩き付けられた。