第1章 祇園健次と年上の彼女
「ぎおーん!」
賀茂は勢いよく祇園に抱きつく。
「うげっ!なんすかちっさい先輩。」
鹿島や赤山と違って受け止めきれない祇園は首から後ろに引っ張られた形になり、青い顔をしている。
「か、賀茂先輩・・・!祇園くんが・・・」
石清水は心配そうに慌てふためきながらなんとか祇園を助け出そうとする。
「あ、わりー。ぎおーん、水野さんきてるぞーwww」
賀茂はニヤニヤしながら祇園にいう。
祇園がフェンスの方を見ると凉子が小さく手を振った。
木陰にある芝生を上で見学しているようだ。
「頑張んないとなー。」
ニシシと茶化す様にいう賀茂とは対照的に祇園は、おう!と元気に返事をする。
賀茂は毒気を抜かれてしまったが同じクラスの女子と可愛い後輩が恋仲になるなんてと母親の様な気分になっていた。
その日の練習は基礎練が多く走りっぱなしの部員たちはヘトヘトになっていた。
「もー無理!はしれねー!!」
部室に戻った苗鹿は床に転がる。
一方今日もずっと松尾とパスの練習に費やした祇園は完全にフラストレーションがたまっていた。
「なーなーキャプテン!明日から俺も練習まざりてー・・・です!」
それを聞いた2年BKチームは笑って言った。
「お前はパス練!ランパス参加できねーだろーが!」
うぐっと口を紡ぐ祇園。
「祇園は彼女にかっこいいとこみせたいんだよなぁ。」
賀茂が祇園の頭をグリグリしながら言った。
その後先輩連中から散々からかわれ、今週中にパスが上達したら来週からはランパスや基礎練に参加できる様になった。
なんとか希望が通った形になった祇園は喜び勇んで部室を出て校門へ向かう。