第2章 八王子睦と大学生彼女
そりゃあ、凉子さんがちやほやされてたら嬉しいけどさ、やっぱり男としては心配じゃんか!
「ハチ、そんな警戒しなくても大丈夫だよ。」
いつも一緒にいる松尾にはわかるのか、肩を叩かれて諭される。
でも、江文や伊勢と仲良く喋る凉子さんをみてると不安でしかないんだよなぁ。
俺以外にいい男いるんじゃないかなぁって。
ほかの部員と話してる姿を通して大学でほかの男と喋ってる凉子さんをみている気がしてなんだか遣る瀬無い気持ちになっていた。
その日、紅白戦では広田にコテンパンにやられた。
眞子にはどんまいと言われたが、広田には集中しろと怒られた。
「睦くん、今日は随分やられまくってたね。」
帰りにファミレスに寄ると凉子さんに言われぎくっとした。
その表情に凉子さんが笑った。
「あんまり恥ずかしいところ見せたくなかったなぁ。」
赤山たちと別れ、家に帰るまでにちょっとだけ二人でしゃべる時間。
誰にも邪魔されないこの時間。
家に帰ればみんなでご飯だから、少し割高なドリンクバーを頼んで二人で喋る時間。
そんな時に、カッコ悪いところ見せちゃった話は凹むなぁ…。
尚も笑う凉子さんに少しムッとする。
「ごめんね。ほら、睦くんてみんなと一緒にいると適当だけど締めるとか締めてるっていうか、いつもニコニコしてるじゃない。なんか可愛いなぁと思って。こんな表情見れるの私だけかなぁと思ったら嬉しくて。」
たしかに俺もほかの奴らがみられない凉子さんの姿を見ている。
時には課題が終わらないーとグズグズする姿もあるし、寝坊して髪の毛ボサボサのこともある。(滅多にないけど)
「やっぱり始終一緒に居られる訳じゃないから、睦くんのこういう表情が見れると嬉しいなぁって思うよ。」
やっぱり凉子さんは大人だ。
俺の気持ちが子供っぽくて悔しい。
「俺も、凉子さんのしっかりしてる時以外の表情が見れると嬉しいよ。」
大人になろうと思った。
凉子さんに相応しいように。