第2章 夏の話
「ヴィクトル、ねぇ、起きて?ちょっと助けて?」
「んー、なぁに?まだめざまし鳴ってないよ?」
「きゃんっ」
抱き込まれ、腰を擦り付けようとしたのか、せっかく少し抜けてたはずの彼のモノがまた奥に入ってきて、思わず犬のような甲高い声が漏れた。
「んん?あれ、抜くの忘れちゃってたのか。ふふ、エリってば、可愛い声出しちゃって、もしかしてまだ足りなかった?」
くすくす笑いながら額にキスが落とされる。
少し掠れた声で問われた内容に、この男なら本当にやりかねん、と首を横に振った。
「No!もう十分!」
「そんな力いっぱい否定しなくても…」
ちょっぴり残念そうな雰囲気を醸しながら、ヴィクトルはゆっくりと腰を引いた。
すると中が引っ張られて、決して気持ちいいとは言えない感覚が襲ってきた。
「ひぅっ」
思わず中を締め付けてしまい、ヴィクトルが色っぽい息を吐く。
「くっ…エリの中、俺の形になっちゃってるね」
なんで昨日のうちに抜いておかないの!?
そう文句を言いたかったけど、愉しそうに腰を揺する男のせいで出て来るのは鼻にかかった声ばっかり。
「ワァオ…もしかしてエリ、結構ノリ気?」
「違います!もう一気に抜いてよぉー」
恥ずかしいやら情けないやらでもう泣いてしまいたい。
いや、泣いたところでどうにもならないんだけども。
「んー、でもエリが俺を離そうとしない
「ばか!」…はいはい、じゃあ一気に行くからエリも協力してね?胎内締めたり可愛い声出しちゃ駄目だからね?」
「ばか!!…心の準備するからちょっと待って」
軽く目を閉じて、深呼吸し、体から余計な力を抜く。
丁寧にお願いします。なんて言う気分にはなれず、ニュアンス的には今すぐ抜かないと不思議な力で死ぬことになる。といった感じでpleaseを使ったのに、彼は何故か嬉しそうに「しょうがないなー」と私の腰を両手で掴んで、ずるりと一気に引き抜いた。
「〜〜〜っっ!!!」
なんとも形容し難い感覚が背筋を伝う。
こんなの2度と味わいたくない!
「もう絶対入れたままにしとかないで!」
「エリちょっとごめんねー」
周りに聞こえないように精一杯配慮した抗議を丸っと無視して、ヴィクトルは私をころんと仰向けに転がし、両膝を抱えた。