第2章 夏の話
一体何をする気なのかと訝しんでいると、足を畳まれ、両膝をぴたりと合わせると、ぬるりとした感触が閉じられた太腿にあたった。
素又、だと?
やだこの人信じられない、同意もなしにこんなことする!?
「ちょっ、ヴィクトル?」
「エリの太ももすべすべで気持ちいいね、すぐ出ちゃいそう」
あれー?おかしいな、確かに腹を立ててたのに、ふにゃっと顔を緩めてそんなことを言ってくるものだから、すっかり毒気が抜かれてしまった。
宣言通り、十数回程擦ったところで、ドピュッと精液が胸のあたりまで飛んできた。
「気持ちよかった、スパシーバ」
彼はは抱えていた膝に、ちゅっと音を立てて労るかのようなキスを落とし、肌に付着した白いものをベッドサイドにあったティッシュで丁寧に拭き取ると、唇で撫でるように、そこにもまたキスしてきた。
「なんかもう、存在がずるい」
ぽそっと日本語で呟けば、なぁに?今なんて言ったの?と首をかしげて聞いてくる。
動きが小動物みたいだ。
「ヴィクトルは可愛いなぁって」
全く検討違いの答えでは無いよね。
「ええ?嘘だ、可愛いは日本語でcawaiiっていうんだろ?俺ちゃんと知ってるんだからね!それに可愛いのはエリの方だろう?」
「ナチュラルに口説くね。日本には色んな"可愛い"の表現があるんだよ、今回のは…めんどくさいからまた今度気が向いたら言うね」
「えー、気になるー、勇利に聞いたら分かる?」
「えー、どうかな、違う意味で同意はしてくれると思うけど…とりあえず褒め言葉って事で勘弁してよ、それよりお風呂、お風呂に入りたいなぁー」
「んー、OK、カゾクブロ入ろ!」
タオルケットに包まれて、抱えられ、誰にも見つからないよう、周囲に気を払い、お風呂に向かう。
「ふふ、俺たちニンジャみたいじゃない?」
「えー、泥棒の間違いじゃない?」
「エリってロマンが無いね」
「そんな私は嫌いになっちゃう?」
「まさか!嫌いになんてなる訳ないだろー」
首筋にぐりぐりと、額を押し付けられると擽ったくて笑い声が出そうになる。
じゃれ合いながらお風呂に辿り着けば、今回もヴィクトルが私を洗ってくれて、私も彼の背中を流し、一緒に湯船に浸かった。
前とは違いエッチなことは無しで、ゆったりとした時間を過ごした。