第2章 夏の話
「いや、凄い演技力だ…。大丈夫、騙されたなんて思ってないよ。エリ、今はちゃんと俺を好きでいてくれてるんだよね?」
不安気にこちらを伺ってくる彼に、こくりと一つ頷き、ヴィクトルが好き。とちゃんと目を見て伝えれば、彼は安心したようにふわりと笑い、空気が和らいだ。
「そうか、よかった!俺もエリが好きだよ!ふふ、俺達は両思いで、付き合いたてのカップルだ。ああ、ミナコが両思いって言ってくれなきゃ俺は態度を改めるのがもっと遅かったかもしれない、その頃にはもしかしたらエリに嫌われてたかも…。エリ酷い事をしてごめんなさい。これからは信じてもらえるように頑張るよ」
「まだちょっと完全には信じられないけど、でも信じたいと思ってるから、よろしくお願いします」
「Yes!!」
覆い被さられていた状態から、ぎゅうっと抱きしめられて、私も彼の背中に手をまわした。
こうしてお付き合いをする事になった訳だけど…
「そう言えばロシアの友達に聞いたんだけど、ロシア男性って我慢するのが愛情表現なんだよね?じゃあ、勇利がGPFで金メダル取るまでエッチは無しでも大丈夫だよね?」
「Why!?え?なんで?どうして!俺はもうエリとするのが気持ちいいって知っちゃってるんだよ?今まで我慢したことなかったけど、最近は頑張って我慢したよ!
ほら、俺の…エリに入りたいって言ってる」
そう言って彼は私の右手をその勃起したものに触れさせ、そのまま上下に動かし始めた。
さっきまで情けない顔をしていたのに、急に色気全開で、ドキッとするくらい雄の顔をしている。
温度差でグッピー永眠するわ。
「エリが我慢してほしいなら、国内の大会までなら頑張るから、今日は手貸してよ、ダメ?」
やだこのリビングレジェンド、しれっと4ヶ月を1ヶ月に短縮させた…。
そしてダメ?って聞いておきながら返事してないのに手の動きは止まらないし、この人本当に自由。
このまま手をオナホ替わりに使われるのも癪なので、私は人差し指と親指に少しだけ力を込めてカリ首を締め付けた。
そんなささやかな抵抗に彼は軽く眉根を寄せ、小さく息を吐く。
「くっ…エリ、意地悪しないで?」
声音は優しいけど、湖水色の瞳の奥は欲でギラギラと光っていて、思わず下腹部がきゅんと疼いた。降参だ。