第2章 夏の話
ふんふん、と勇利の話を真剣に聞いたあと、ヴィクトルはため息まじりに「なるほど、日本人って変わってるね」と呟いて、私の手を取った。
そして…
「エリ、ツキアッテクダサイ」
と、何故か日本語で告白してきた。
「はい?」
「ヴィクトル、恵利いいって言ってるよ〜」
「よし、これで俺達は恋人同士だ、もう合コンなんて行っちゃダメだからね、あ、今日男と連絡先交換したよね?全部消して。分かった?」
待って、私の返事勝手に翻訳しないでお姉ちゃん!それは疑問の "はい"であって、肯定ではないから、勇利もおめでとうって拍手するのやめて!
「あーもう!ちょっとヴィクトルこっちに来て!」
彼の手を軽く引っ張って自分の部屋に連れていく。
適当に座らせてから私も隣りに座って、彼の真意を問おうと思った。
だって、遊ばれてるだけだったらこんなの辛すぎる。今ならまだ大丈夫、線引き出来る所にいる。
「あの、いつから付き合ってると思ってたの?」
「んー、エリがブルガリアに行く前くらい?」
きっとそれは私がモヤモヤとしていた時期、つまりプレゼントをくれていた時期の事なんだろう。
だとすると、本気であれば彼の中では私たちは1ヶ月半ほど付き合っていた事になる。
「私の事好きになってくれたの?それとも…」
「もしかしてからかわれてるとか遊ばれてるとか不安に思ってる?」
「まぁ…」
普通に考えればそうだと思う。
「それは俺が勇利をダシに脅しちゃってたから?」
優しいテノールの問い掛けに、私は小さく頷いた。
すると彼はぎこちなく私を抱きしめて、ごめん。と耳元で謝罪した。
「謝って済む問題じゃないのは分かってるんだ。でも俺本気でエリの事が好きなんだよ、それだけは信じてほしい」
嘘だ。そんなの信じられない。
そう口にしたかったけど、今話そうとしたら涙が溢れてきそうで、私は黙って首を横に振った。
「ごめんね、俺の話聞いてくれる?」
聞きたいけど、聞きたくない。どちらにも首を振れないでいると、やがて彼はぽつりぽつりと話し始めた。